2008年10月29、30日 吉野林業地を見学した(奈良県川上村)。
●吉野川上流域に位置する吉野林業は、500年の歴史を持つ日本最古の林業地である。足利末期、川上村で造林が行われた記録が残っている。戦国時代には、大阪城・伏見城を始めとする城郭建築のために、多量に伐り出されるようになった。さらに江戸時代には、酒・味噌・醤油用の樽材として重用され、その後は高級建築材として、絶大なブランド力を築いた。写真は250年生の吉野スギ。
●気温、降水量に恵まれ、冬季の季節風も弱い。地形が急峻なため、たまり土(崩壊土)が多く、林木の生育には最適の条件を備えている。
●吉野林業の特徴は、独特な育林方法により、 無節・真円(まん丸の年輪)・年輪幅(細かく均一)・通直・色・香り・強度など高品質材を生産してきた点である。密植・多間伐・長伐期だ。スギ林を仕立てる場合、一般に㌶当たり3000本のところを吉野では12000本植栽する。そして生長を抑えながら、弱度に何回も間伐して、100年〜200年かけて大径木を育てる。現在は短伐期化しつつあるが、それでも㌶当たり7000本ほど植えている。若いスギ林は生け花に使う剣山のようだ。枝葉はフワッとついている感じで 枝振りは小さい。
●吉野スギは赤スギともいわれ、心材部の淡紅色が価格に影響する。材色を良くするために、伐倒後は林内で天然乾燥する。
●吉野林業は、急峻な地形から作業道の整備が難しい。これまでヘリコプター集材に頼ってきたが、木材価格の低迷、並材の奥地化など採算がとれない状況になっている。そのような中で、山を痛めない道づくりを進めて、吉野林業の再興を目指している会社がある。勾配35度以上は道幅2.5m(盛土部分は50㌢)に限定し、部分的に丸太を埋め込んで、法面を補強する。現在、同社所有林の路網密度は㌶当たり150m〜250mある(林野庁ガイドラインは、44〜50m)。これにより、天候に左右されず、林内のどこへでも車で行き、作業できる。若い作業者も定着した。伐出費5000円/m3が目標だ。
●原木市売市場に吉野スギが並ぶ。ここでは月に4回、市が開かれ、吉野スギのほかケヤキ、トチノキなどの広葉樹大径木も競りにでる。お目当ての材を求めて全国から製材業者が買いにくる。
●木取りは製材所の腕の見せ所。①柱②赤白柾角③赤柾角④白鴨居⑤長押⑥廻縁。また、梁桁・天板などに用いられる他、端材は割り箸に、スギ皮は日本家屋の屋根の下地、部屋壁の内装として使われる。
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